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P&W エンジンの悪夢が再燃か?

中国国際航空(CA)の機体でトラブル発生

先日中国国際航空のA320neoがシンガポール到着時にエンジンから火災と思われる事象が発生して緊急着陸、乗客に怪我はなかったものの同じエンジンを搭載する航空機についてエンジンのリコールが出される模様。 この対象となるエンジンはP&W製の1100GTE(Geared Turbofan Engine )で従来型のエンジンに比べて燃費性能が優れていることから日本のANAをはじめアジアの航空会社も多くこのエンジン搭載のA320、321を導入している。

 

またもやANAに災難が。。。

原因となっているのはやっぱり?大きなファンブレード周辺の部品の問題とのことで、以前同様の事象があったB787のRolls Royce(RR)製Trent1000、B777のP&W 4000シリーズが似たような現象で全機部品交換、P&W4000シリーズを搭載する機材は問題再発確認も含めて長期間運行停止となった経緯がある。 その間、航空会社は代替機を準備するなど大きな損害を被ったが、いずれのケースもANAが導入するエンジンなので、仮にP&W1100がリコールとなると三度目の被害となる。

B787のローンチカスタマーだったANAを悩ませたRolls Royce Trent 1000

国内幹線の主力であるB777が2年近く運行停止を余儀なくされた。

地方路線や短距離国際線で活躍するA320neo

現在ANAの場合、A320neoが11機、A321neoは22機保有しているのでこれらを順次改修していかなければならず、P&W4000の時はコロナ禍だったので影響が少なかったと思うが現状は主力機となりつつある A320/321が手薄になるのは地方路線にとっても大きな影響となる。

地方路線、準幹線の主力となっているA321シリーズ

 

エアバスA320/321シリーズのエンジン

ちなみにこのA320/321シリーズの場合、従来仕様はCEO(Current Engine Option)と呼ばれ、エンジンはGEなどが主体のCFMインターナショナル製のCFM56-5Bと日本のIHIMHI, KHIが米国のP&W,英国RR,ドイツMTUなどと共同開発して製造したV2500がある。 問題となっているNEO( New Engine Option)についてはP&W製の他はCFMのLEAP-1Aと呼ばれるエンジンから選ぶことができ、PeachやJetStarが最近導入しているA320neo,A321LRにはこのLEAP-1Aが搭載されている。

日本で唯一V2500エンジンを採用するJetstarのA320ceo

最新のLEAP-1Aを搭載したPeachのA321LR

Peachと同じくLEAP-1A搭載のJetstar A321LR

資料を見る限り、ANAは現時点でA321neoを26機発注しておりまだその納入は終了していないと思われる。B787についてはエンジンメーカーを絞った結果大きな損害が出たという苦い経験もあり、最近導入された国内線用のB787-9はTrent1000からGEnXに変更、今後導入される国内線のB787-10についてもGEnXになるとのことだが、A321neoについてはそうしたオプションが使えるのかどうか現状は不明。

 

単通路機の世界的ヒット商品

話が前後するが、このエアバスA320/321シリーズは現状中短距離路線用として世界中で採用されヒット商品となっている。また、今後航続距離をさらに延長したXLR(eXra Long Range)もまもなく実用化されるくらい守備範囲の広さと経済性に優れた機材。ライバルのボーイング社の小型機であるB737-MAXシリーズが墜落事故が原因で長らく運行停止だった間にこのカテゴリーの市場をエアバスが席巻した形。 日本の航空関連企業も多く関わっていることもあり、今回のリコールでこれらの企業業績が悪化する懸念がある。

 

これからの動向に注目

エアバスの発表だと当該の対象は全世界に約350機でエンジンはその倍の700基。今後3年程度をかけて順次点検等を実施するとのことだが、深刻な欠陥がないことを祈るばかり。ANAはすでに自社保有の対象機材33機が対象であると発表しており、運行上の支障はないとのことだがそれでも影響は大きいはず。 JALを含めて他の日系航空会社には現状対象機材がないが、JALが現在のB767後継機として検討していた可能性があったと思われるので、今後の機材選定には少なからず影響もありそう。